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夜風が背後から吹いて、少しの肌寒さを感じつつ私はどうこたえるべきか考えながら、振り向いた。
彼の記憶に期待しているのかどうか私自身がわからなくて、答えようがないというのが実際のところで……ただ、確実なのは、私からあの夜のことを話すつもりは、無い。
「どこまで、覚えてるの?」
問いかけると、彼は首の後ろを掻きながらバツが悪いのか眉根を寄せ目を逸らす。
素知らぬ方を向きながら、ぼそりと言った。
「いつもの店に行って、お前が酒を」
「お前って言わないで」
「……恵美?」
「なんで下の名前呼び捨てなのよ」
「めんどくせーな話がすすまねーだろ」
「私は話すことなんてないから。じゃあ帰るわ」
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