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「構わないわよ、一人で帰れるから」
出た声の冷やかさには自分でも驚くくらいだった。
同時に、過去の自分が頭を過る。
嫉妬以外のなんでもない。
あの頃の私も、そうして美里と瑛人君を引き離してしまうところだった。
やっぱり、私はまだ変われてない。
まだまだ、恋愛なんてできない。
深く息を吸い込んだ。
無理やりに口角を上げて、できる限り優しいトーンで私はもう一度、美里に言った。
「子供じゃないんだから。まだ真っ暗ってほどでもないのに、送ってもらうなんて大袈裟よ。じゃあね」
そうして、玄関の扉を離した。
後は重みで勝手の閉じるだろうと予想して、踵を返す。
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