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聞こえるはずの、扉のしまる音がしない。
その代わりに手首を掴まれた感触がした。
「送ってくから、待てって」
振り向けば思っているよりすぐ傍に彼が居る。
手首の素肌に、彼の手が触れている。
嫌だ……!
直に触れられている、と気付いた途端だ。
ぞわ、と鳥肌が立ち、思い切り、振り払ってしまった。
「離して!!」
大きな声に美里も瑛人くんも驚いて目を見開いているけれど……この男までが驚いているのが私は気に食わない。
私がこれほどまでに、誘ってくれた夕食を断って帰るほどに彼から逃げる理由を、どうせこの男は欠片も覚えていないのだ。
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