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誰も動けないまま、私と彼ら三人を隔てる扉が音を立てて閉じた。
その瞬間、呪縛が解けたように動き出したのは扉の向こうも私も同じ。
向こう側で美里の少し慌てた声が何かを言っていたけれど、私はすぐに背を向けて階段へと走った。
追いかけてくるはずない、けど。
万一の場合、エレベーターで捕まるよりは階段の方が逃げられる。
美里と瑛人くんの部屋は七階にある。
そこから駆け降りるのは少々無理があったみたいで、一階に着く手前で膝ががくがくと震えて力が抜けた。
「は―――……」
両手を膝に突いて、屈みこみ息を整えると、そっと階段の出口からエレベーターホールのあるエントランスを覗き込む。
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