逃げる魚、追う釣り人

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「帰り道です。何の用か知りませんが」 『休みいつ?』 「なんの…」 『もしくは早く上がれる日』 何の用ですか、と。 これ以上言い続けても帰ってくる言葉はわかりきっている。 「なんでですか」 『会いたいから』 驚いて、言葉が出なかった。 二重の驚きだ。 この男から『会いたい』と言う言葉が出るということと 両極端な二人がいたものだな、しかも身近に、という驚き。 『会って、確かめたいことがあるから』 ……ま、ただ会いたいとかそんな甘い言い方ではなかったのは、ちゃんと気付いていたけども。 「確かめたいことって? 電話じゃだめなの」 『あの日、俺の部屋まで入った?』
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