第4話

逃げる魚、追う釣り人

「っていうか、店長、杉浦さんに強く言えないだけでしょう？」

溜息をついて下から睨むと、店長が苦笑いをして後頭部の髪を掻いた。
杉浦さんは若いし自己主張が激しいというか……定時になったら何があってもきっちり上がるし、残業など頼みにくい雰囲気であるのは認めるが。

そこは、ビシっと店長から言って欲しいのだけど。

「頼むよ、豊田さんのほうが頼みやすいし……テキパキ動いてくれるからやりやすい」

最後の方は、少し声を潜め店頭の方を気にしながら言った。
ここから店頭は見えないが、扉はロールカーテン一枚で隔ててあるだけだからいつ誰かに聞かれてもおかしくはない。

「……仕事ですし。やりますけど」

ディスプレイの模様替え、毎回私が手伝わされているのは気のせいじゃない。