逃げる魚、追う釣り人

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条件反射で浮かんでいた営業スマイルを引っ込める。 彼は、私の顔をちらりと見るとガラスのショーケースの中へと目を向けた。 あくまで、お客様として接すれば良かったのかもしれないが。 つい、口が止まらなかった。 「何しに来たんですか」 「カステラ買いに来たんだけど」 「嘘ですよね」 わざわざ、この店に? 私の顔を見ても驚きもしなかったのが偶然ではない証拠だ。 「何、追い返す?」 客という立場で来れば、無下にも出来ないだろうというこの戦法。 美里の時と全く同じで、進歩がないのかこの人は、と思わずため息が零れた。 「美里から聞いたんですか」 「いや、百貨店の方の店長」
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