逃げる魚、追う釣り人

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実際に着信があったのは、カツサンドを食べている時だった。 出たくないのか出る勇気がないのか、とにかく私は出なかったけど。 仕事中には全く鳴らなかったその着信音の主を表示で確かめて、なぜか私はホッとした。 「あの人、元カレとか?」 折角、その方向に向かいそうな話しを逸らしたつもりだったのに。 結局、店長はどうしてもその話題に戻したいらしい。 「違います」 「え、じゃあ喧嘩中のカレ」 「もっと違います」 否定ばかり繰り返す。店長が聞きたいのはそう言うことじゃないのはわかってるけど。 私と彼の関係をどう説明すればいいか私もわからない。 「また来るって言ってたから、どうしたらいいのかと思って。今後は警備呼ぼうか?」 「や……そこまでは」 このままでは、すっかり不審者扱いになりそうだ。
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