逃げる魚、追う釣り人

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ショーケースの中や天井、棚の空きスペースがジャック・オ・ランタンや黒い蝙蝠でいっぱいになったところで、店の中央に店長と一緒に立って全体をぐるりと見渡す。 「いい感じですね」 「ん、ありがとう、助かったよ。この土日に合わせたかったからね」 ああ、そう言えば。 明日は土曜日だった。 だから、店長は今日にどうしても飾り付けがしたかったのかと納得する。 それでもせめて事前に言ってくれれば、私と杉浦さんとシフト交代したりできたのだが。 計画的に……と言っても改めそうにないので、黙っておいた。 帰り支度を整えて、一緒に店の外に出ると店長が大きな音をさせてシャッターを閉める。 時刻はもう、11時近かった。
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