逃げる魚、追う釣り人

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「じゃあ、何か飲みに……あ、今日のお礼に!」 「カツサンドで十分です。それに明日も仕事ですし」 店長だってそのはずだ。 二人とも早番ではないから、そんなに朝早いわけではないが、特に用がないならさっさと帰るに限る。 しかし、店長がそれでも動こうとしないから私も帰るわけにもいかず、首を傾げて見上げた。 本当に、無計画な人だ。 こんなことまで。 彼の言いたいことは、なんとなくわかっている。 「それじゃ、今度……飲みにでも行かないかな」 意を決したような表情を見ていると、本当に私より十歳近く年上なのか疑わしい。
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