逃げる魚、追う釣り人

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―――忘れ物。   部屋の、中。 思い当たるものが、私にはあった。 きっと彼の部屋じゃない 別の場所に落としたんだと言い聞かせて考えないようにしてた。 彼がそれ以上何も言わないことが怖い。 嘘をついた理由を見透かされている気がして。 『明日は、何時?』 無言は肯定を物語る。 彼の質問の仕方が変わった。 此方の上がりに合わせて来るつもりなんだろう。 「明日明後日は、土日だから」 『平日ならいいんだな。月曜は?』 「……六時」 『わかった』 それだけ言って、返事も聞かずに通話は切れた。
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