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「何がしたいの」
『え?』
「私と藤井さんを会わせて、何がしたいのよ」
私の声音の低さに、美里もさすがに怯えたのか電話の向こうで『いや』とか『その』とか慌てふためく声が聞こえる。
美里にしたら面白半分でしたことなのかもしれないが、私には冗談ではすまないことなのだ。
『だって。なんか、藤井さんが恵美に会いたいって言うから』
「は? ……っと、わっ!」
驚いて、指先からするりと煙草が落ち、慌てて拾い上げる。
火種がラグを少し焦がして、すぐに湿ったテーブル拭きで擦ったけれど少し痕が残ってしまった。
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