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「何が、悪かったの?」
「何って……酔っ払って家まで送らせたから」
ああ……なんだ。
そのことか、と少し胸を撫で下ろす。
彼がどういうつもりで『忘れ物』を届けにきたのかわからないから、私はいちいち過敏に反応してしまう。
「っていうか、飲めないなら飲めないって言ってよ」
「強引に誘ったのはお前だろ」
「だからって……店で寝入るまで飲むって」
「俺も飲みたい気分だったんだよ」
飲めない酒を飲みたくなるくらいに、美里のことが好きだった。
そういうことだ。
じくじくと痛む胸と、浸透する黒い感情。
この暗闇から逃げたくて、私は過去の私を閉じ込めたのに。
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