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彼が連れていってくれたのは創作和食の店でとても美味しい。
だけど、二人とも無言でお酒も入らず烏龍茶。
私達のテーブルは静まり返っていた。
彼が向かいで片手で頬杖を突きながら、もう片方の手の指でとんとんとテーブルを叩きながら言った。
「まーた、仏頂面」
「うるさい」
誰のせいで、この黒い感情と戦っていると思っているのか。
何重にも蓋をして、溢れ出さないように。
ずっと、閉じ込めてきたのに。
―――なんで、美里なの。美里ばっかり。美里、美里……
誰にも、言えない。
こんな、惨めで陳腐な恨み言。
「――――――、俺が」
もくもくと箸で食べ進めながらも、私の意識は完全に沈み込んでいて、藤井さんに話しかけられて、我に返る。
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