あの夜のこと.2

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目を覚ましてしまったら、またあの冷たい目で見られたら。 私を慰めてくれた優しい夜がなかったことになるような気がして、私は逃げるように彼の部屋を後にした。 ピアスがなくなっていることに気が付いたのは、家に帰ってからのことだった。 まさか……と、彼の部屋のベッドが頭を掠めたけれど。 いつからなかったのかなどよく覚えていなかったから、きっと買い物をしている時にでも落ちたのだと、そう自分に言い聞かせた。 その後は、彼の姿を売り場で見つけるたびに逃げ回り、一度だけあった彼からの着信には出なかった。 彼もそれ以上は私を無理に探そうとはしなかったから。 きっと、あの夜のことは悟られていないのだ。 そう信じて、やがて店を異動になりそれきり会うことはなかった。 美里の家で、美里の策略で彼と再会するまでは。
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