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「なんでって……お前」
私の金切り声が頭に響くのか、藤井さんの顔が不快に歪む。
彼の仕草の全てが、私を否定している気がして、哀しくて涙が出た。
私だと気付いた途端に、あの熱情が消えたのが悔しくて。
私はいつだって、美里にはかなわない。
ずっと、ずっと。
「私って、そんなに何の魅力もないの」
恥ずかしい。
泣きながら自分の弱みを、しかもこの人に曝け出してしまうなんて。
余りの恥ずかしさに俯いたら顔を上げられなくなった。
頭の隅っこで、小さくなった理性の私が膝を抱えてどこかに隠れる場所を探している。
だけど、この人にこそ、触れられたい。
女として、認められたい。
一時の慰めでもいい、夢の中の『美里』ではなく目の前の『恵美』を選んで欲しかった。
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