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やめないで
欲しがって
女を捨てたから地味な格好をしてるわけじゃない
求められない理由を「地味だから」にすり替えてしまえば
もう痛くない気がしたの
「……めないで」
蚊の鳴くような声でも彼の耳に届いただろうか。
俯いたまま、視界の端に見える彼の膝に手を伸ばして触れた。
「やめないで」
惨めだ。
泣いて懇願して、抱いてもらうなんて。
それでも今、触れてもらえなければ
私はきっともう、二度と立ち直れない気がした。
彼の顔を見る勇気なんてないけれど、きっと私を憐れむように見下ろしている。
もしくはまだ酔っていて訳も分かっていないだろうか。
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