あの夜のこと.2

14/18
682人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
やめないで 欲しがって 女を捨てたから地味な格好をしてるわけじゃない 求められない理由を「地味だから」にすり替えてしまえば もう痛くない気がしたの 「……めないで」 蚊の鳴くような声でも彼の耳に届いただろうか。 俯いたまま、視界の端に見える彼の膝に手を伸ばして触れた。 「やめないで」 惨めだ。 泣いて懇願して、抱いてもらうなんて。 それでも今、触れてもらえなければ 私はきっともう、二度と立ち直れない気がした。 彼の顔を見る勇気なんてないけれど、きっと私を憐れむように見下ろしている。 もしくはまだ酔っていて訳も分かっていないだろうか。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!