820人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
だからと言って、別に苦手意識だとか嫌悪感などの悪感情を抱いたこともない。
寧ろ俺に対しては小気味いいくらいの毒舌で面白いと思っていたし、こちらが多少棘を含んだ言い回しをしても堪えることもないだろう。
そう、思っていたのに。
女の涙混じりの叫び声にふと目が覚めて、最初に感じたのは酷い頭痛だった。
吐き気すら伴う頭痛の理由も自分の今の状況も、余りわかっていなかった。
ただ、自分の身体の下に組み敷かれている女の存在を認識して、それが誰であるか懸命に記憶を辿る。
唇が、女の首筋に触れている。
その肌が、時折しゃくりあげて波打った。
重い頭を無理矢理持ち上げて、薄暗い部屋とまだ酔いの覚めきらない頼りない視界で女の顔を見下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!