似た者同士-2

18/23
709人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
それなのに、いくら隠れようとしても彼は私の手をはぎ取ってしまう。 「ひど、なんで」 「恵美」 「なんで、忘れたふりして」 「恵美」 何度も私を呼ぶ、彼の声。 その声の優しさに、ほんの少し耳を傾ける余裕が戻る。 お酒の匂い、シャツからは少し煙草の香り。 酷いことばかり言うこの人の、触れる唇はとても優しい。 「……忘れて欲しそうだったから」 ひく、としゃくりあげ見上げた、酔いで充血した彼の目は真っ直ぐ私を捉えていた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!