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「ねぇ」
言って。
そう願いを込めて、彼のシャツの布地を引っ張る。
だけど、きっと彼は言わない。
「……うるさい」
「ぷっ……」
ほらね。
予想通りで思わず吹き出した。
けれど、言葉にはならなくても、酔った彼は十分すぎるくらい素直で饒舌だ。
やっとわかった。
私と彼は、とてもよく似ている。
私もそうなのだ、と彼を見ていて自分の至らなさに同時に気付く。
好きと言ってほしい。
言葉にしてほしい。
そればかり願って、自分のことはいつだって棚上げして。
瑛人くんの時も、結局私は過去形でしか口に出来なかった。
自分への、けじめとして。
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