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こんな、人を馬鹿にするような話し方をする人ではないと思ってた。
酩酊していることはわかっているが、悔しさで一度下唇を噛み締める。
けれど、これ以上刺激したら危ない。
だから、できるだけ柔らかな口調に戻すと。
「偉そうなこと言って、すみません。けど……」
手首を掴む手も、緩めて反抗の意思がないことを示して、もう一度宥める口調で続けた。
「今、酔ってらっしゃるから……正気に戻って欲しいだけです。お願いします」
目をギリギリまで視界の端に寄せると、焦点は合わないが店長の顔が見える。
けれど、どんな表情をしているのかはよくわからないまま。
お酒の匂いと共に、影が濃くなり顔が近づくのがわかった。
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