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お酒臭い……
気持ち悪い。
強く瞑った目から涙が滲んだ。
一人で来るんじゃなかった、せめて杉浦さんに店の外ででも待っていてもらえば良かった。
だが、無理矢理抱きつかれ電話口で泣いていたのを思うと、近寄らせるのが可哀想だった。
「店長……ほんとに、やめて……」
「豊田」
背中が密着して、熱いほどの体温が店長から伝わってくる。
「やだっ!誰か!」
誰か、警備の人が見廻りに回っていることを祈って、出来るだけ大きな声を張り上げたけど、ここは奥の部屋でそう簡単には届くとは思えない。
何か……何か逃げ出す方法を。
考えても焦った頭では何も浮かばず、悔しくて唇を切れるほどに噛み締めた時だった。
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