強さも弱さも、まるごと全部

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泣きながらの彼女の言葉を拾い集め、状況を把握した私はいますぐ職場に戻ることを決めた。 「……わかった。すぐ行くから、そのままそこにいて。モール街の一番店に近いトイレ?」 『す、すみませ……帰ろうにも、鞄がロッカーで』 なんで、こんなことになったのか。 私の対応は、甘かったのだろうか。 苦く唇を噛みながら、とにかくベッドから起き上がる。 「杉浦さんが謝ることじゃないから。すぐに行くから待ってて、三十分もかからないから」 安心させるように、できるだけ明るい声でそう伝え電話を切る。 「恵美?」 私を呼ぶ声がして、お腹に絡んでいた腕に力が篭った。
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