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私の話声で起こしてしまったのだろう。
眠っていたはずの彼が、薄目を開けて私を見ている。
「ごめん、起こして。私、ちょっとお店に行かなくちゃいけなくなった」
まだ頭が痛むのか寝ぼけているのか、眉根を寄せる彼の腕からするりと抜けると、手早く服を拾い集め彼に背を向けて身支度を整える。
余り待たせるわけにもいかない。
コートも店にあるとしたら、きっとショッピング街のトイレでも冷えてくるに違いなかった。
「待て、俺も行く」
そう言って藤井さんが上半身を起き上がらせるけど、まだ酔いの覚めきらない彼に頼るわけにもいかない。
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