強さも弱さも、まるごと全部-2

16/22
前へ
/23ページ
次へ
てっきり車なのかと思ったら、彼は駅の改札から姿を見せた。 長身の彼は、混んでいても遠くからでもすぐに見つけることができる。 その顔を見たら……やっぱり呑気になど出来なかった。 近づくほどによくわかり、申し訳無さばかりが胸に溢れる。 「ごめ……ごめんなさい。私のせいで」 彼が改札を抜けて目の前に来た時には、俯いて涙が止まらなくなった。 恐らく警察を出て職場に直行していたのだろう、いつもは小綺麗にしている彼が、二日前と同じスーツでシャツはよれよれで、髪も少し乱れていた。 表情だけはいつもと変わらないのが救いだった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

702人が本棚に入れています
本棚に追加