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頭に乗った手が、くしゃくしゃと私の髪をかき混ぜる。
そのまま頭をつかんで、少し胸元から引き離された。
「こんなとこで泣くな勿体無い」
「だって。とまらな……え、勿体無い?」
「帰るぞ」
くるりと方向転換させられて、背中を押されて促される。
そうだ。
この人は、私の泣き顔が大好物だった。
「帰ってから泣けって言われても都合良くいかないわよ」
「周りに見せたくない」
「…………」
「あー、早く風呂入りたい」
こちらが赤面しそうなことをぽろりと言っておきながら、飄々とした顔で自分のシャツの襟元を自分で嗅いで、顔をしかめ「汗臭い」と呟いた。
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