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「お前……」
彼の形相は、一目瞭然なほどに怒っていて、低く声は掠れていた。
大きく肩を上下させていて、眉間に皺を刻んで深く息を吸い込むと。
「ほんっとに、言うこと聞かねえ女だな!!」
怒られたのは、私だった。
余りの剣幕にびくんと肩が跳ね、そんな私にお構い無しに更に怒鳴り声は続く。
「俺が待てっつったら待てよ、鉄砲玉かお前は!」
「ごめんなさい!」
首を竦めて反射的に謝罪の言葉を口にした。
そう言えば以前、美里の一件の時にも似たような事があったと思い出す。
あの時も、私は藤井さんの制止を振り切って飛び出したのだ。
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