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「いて……」
小さな声で、店長が唸りロッカーの前で上半身を起き上がらせる。
びくん、と恐怖を思い出した身体が跳ねて、藤井さんの傍に寄ろうとした。
「え……?」
それは、叶わなかった。
急に騒がしい数人の足音が聞こえたかと思うと、警備員が三人部屋に飛び込んで来たのだ。
「え……な、なんで?」
大きな声で威嚇され、羽交い絞めにされ動きを封じられたのは、藤井さんだった。
その状況に、私の頭は更に混乱する。
だって、私や杉浦さんに危害を加えたのは、店長なのに。
「大人しくしろよ!」
警備員の一人が、藤井さんの頭を無理矢理押さえ込もうとした。
彼は顔をしかめながらも、両手を上げて逆らう意志がないことを示す。
「ま、待って!違う、その人は」
私を、助けてくれたのに。
声を上げようとする私に、藤井さんが掌を向けて制止させる。
諦めたように溜め息をつく彼が連れていかれるのを、止めることは出来なかった。
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