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「何? 兄貴なんか機嫌悪い?」
すれ違いざまに、要さんが随分ストレートにそう聞いたけれど、藤井さんが素直に認めるはずもない。
「別に、いつもとかわらないだろ」
そう言いながらむすっとした表情そのままに、大広間に入ってしまった。
後から続こうとする私に、要さんが視線で問いかける。
私は首を傾げて、わからないふりをするしかなく、後は苦笑いで誤魔化して藤井さんに続いて広間に入った。
「わ、いい匂い」
先ほどから微かに感じていた、酒粕の匂いが強く部屋に立ち込める。
苦手な人は、苦手かもしれない。
私は嫌いじゃなかった。
「粕汁、もう出来てるからね。いらっしゃい恵美ちゃん」
お母さんがテーブルにお料理やお皿を並べている。
それを子供達が手伝っているのか邪魔しているのか、わらわらと畳の上を動き回っていた。
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