俺の名前を呼んでくれ。

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火を通すことでアルコール成分は少しは飛んでるだろうけど、藤井さんの酒の弱さは半端じゃない。 ましてや、今日は車で来ているのだ。 「ふじ……、暁さんって、粕汁大丈夫なんですか?」 「んー? 嫌いじゃないけど食べたり食べなかったり。聞いてみて」 お母さんにそう言われて、藤井さんの方へ顔を向けると彼も私の方を見ていてばちんと目があった。 「あ、ねえ……」 尋ねようとした途端、だ。 藤井さんは、ふいっとそっぽを向いてしまった。 ちょ……もしかしてまだ怒ってるの? 余りにも子供っぽい所業に思わず頬が引き攣った。 藤井さんは細長く並べた机の一番端に座っていて、私がいるのはその反対の端。 肩を叩いて振り向かせようにも手は届かない。
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