俺の名前を呼んでくれ。

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私の仕事の年末が、殺人的に忙しいのは藤井さんも知っていることだ。 開店時間は接客に手一杯で、いつもは合間を見て処理している配送や事務作業が全部閉店してからになってしまい、連日終電近くまで残業になっていた。 彼も無理に会おうとしなかったし互いに電話連絡だけ取っていたのだが、私の帰宅時間が余りに遅いので毎日店まで迎えに来てくれるようになった。 会う時間も話す時間も極端に減って、せめて寝る時くらいは傍に気配を感じてたいな……なんて。 互いに口には出さなかったけど、多分。 藤井さんも同じように思ってくれていたのだと、思う。 最初は私の家にちゃんと送ってくれてたのだけど、そのうち彼のマンションに泊る日が多くなり最終的に家に帰ることがなくなってしまった。
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