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ずきん、と。
簡単に彼の言葉は私の胸に突き刺さって、涙の気配まで呼び寄せる。
「……っ」
何か言い返そうとして、「めんどくさい」自覚はあるから結局言葉に詰まってしまった。
この空気に耐えられなくなった頃にちょうど車は駐車場に停車して、私はすぐさま車を降りる。
「……おい。どこ行くつもりだ。」
「美里のとこにでも行く」
アパート、解約するんじゃなかった。
美里のとこにお邪魔する以外、どこにも行く当てがない。
駐車場を出てマンションのエントランスとは反対方向に歩き始めた私の背後で、荒々しく車のドアを閉める音がして、すぐに足音が近づいてくる。
「いい加減にしろよ」
逃げようとしたけど、苛ついた声と同時に強く後ろに引き戻されて足元が少しふらついた。
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