俺の名前を呼んでくれ。-2

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「……最後に運転したの、いつだ」 「えっ……いつだっけ、覚えてない」 「いい、俺がする」 藤井さんは頬をひきつらせながら私の提案を退けた。 失礼な……ほんのちょっとの距離なんだからなんとかなるわよ。 駐車は……まぁ多少斜めでも問題ないでしょぶつけなければ。 暫くして、お父さんが入ってきて藤井さんの近くに座る。 要さんが藤井さんの向かいに座って、その時に漸く、向こうが上座なのだと気付いた。 堅苦しくないアットホームな雰囲気の家族だけど、昔からの商売を家業として継いでいるせいか、そういった部分はきちんとしている。 粕汁とその他の大皿料理がテーブルに並び、席もほぼ埋め尽くされて賑やかな食事会が始まる。 酔っぱらったら、また何か普段言わないようなこと言わせてやろう、なんて腹いせを考えていたんだけど。 結局彼は粕汁以外のものばかり選んで食べて、最後まで素面だった。
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