677人が本棚に入れています
本棚に追加
「……最後に運転したの、いつだ」
「えっ……いつだっけ、覚えてない」
「いい、俺がする」
藤井さんは頬をひきつらせながら私の提案を退けた。
失礼な……ほんのちょっとの距離なんだからなんとかなるわよ。
駐車は……まぁ多少斜めでも問題ないでしょぶつけなければ。
暫くして、お父さんが入ってきて藤井さんの近くに座る。
要さんが藤井さんの向かいに座って、その時に漸く、向こうが上座なのだと気付いた。
堅苦しくないアットホームな雰囲気の家族だけど、昔からの商売を家業として継いでいるせいか、そういった部分はきちんとしている。
粕汁とその他の大皿料理がテーブルに並び、席もほぼ埋め尽くされて賑やかな食事会が始まる。
酔っぱらったら、また何か普段言わないようなこと言わせてやろう、なんて腹いせを考えていたんだけど。
結局彼は粕汁以外のものばかり選んで食べて、最後まで素面だった。
最初のコメントを投稿しよう!