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「そうなんだ」
かといって、ほいほいと吸えるほど私は図太くないし。
ちらりと藤井さんを見ると、別段いつもと変わらない。
だけど、お母さんのことを「あの人」と呼んだことに、どこか寂しい距離を感じる。
気にしすぎかもしれないけれど。
それ以上何も言えずにただ並んで煙草の煙を目で追っていると、目の前に煙草の箱が差し出される。
「持ってきてないんだろ」
「そうだけど、良いってば」
「最初に取り繕うと、後がしんどい」
そう言って、煙草の箱を指ではじくと中から一本が少しだけ頭を出した。
後……今後。
私と藤井さんの家族には、今後があるのだと藤井さんが意識してくれてることが、くすぐったくて口元が少し緩んだ。
「……じゃあ、一本だけ」
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