677人が本棚に入れています
本棚に追加
じりじりと火種が移るのを見守る。
ほんの数秒のことだけど、恥ずかしいような居た堪れない時間というのは長く感じるものだ。
ふと、視線を感じて目線を上げれば、ばちんと彼と目が合った。
「……っ、けほっ」
つい、いつもより重く感じる煙を深く吸い込んでしまい、喉に堪えて咳き込んだ。
距離を取ろうと彼の腕を軽く押すと、すんなりと離れていく。
「もう、こんなことなら自分の煙草持って来れば良かった」
言いながら、少し痛む喉を抑える。
隣を見たら、藤井さんは煙草を咥えながら片手の指で目頭を抑えていた。
「どうしたの?」
「目に入った」
「馬鹿じゃないの」
面白がって人をからかうからだ。
思わず吹き出すと、藤井さんも可笑しそうに肩を揺らす。
最初のコメントを投稿しよう!