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抱き留められたというよりは、捕まえられた感覚だ。
ほっとかれたかったわけじゃない、引き止めてくれて嬉しい気持ちは確かにあるのに、今更素直にもなれない私はその手を振り払おうと抵抗する。
「離して。頭冷やして帰ってくるから……」
引き止めてもらったことで少々、調子にものった。
言葉遣いは悪くてもほんの少しは何か甘い言葉をくれるのかも、なんて。
そんなずるくて安い期待は綺麗に裏切られる。
引き摺るようにエントランスに連れ込まれて、何故かすぐ傍の階段の踊り場に追い込まれ壁を背中に閉じ込められた。
「言うこと聞かないならこのまま此処で犯すぞ」
「……え」
「足腰立たなくなったら部屋に入れてやる」
まさか。
冗談でしょ、と彼を見上げながら頬を引き攣らせたら、襟元に何かが触れた気がして俯いた。
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