俺の名前を呼んでくれ。-2-2

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「ちょっ、やめてよ!」 俯いた視界に入って来たのは、もうコートのボタンを器用に外していく藤井さんの左手だった。 気付いた私が襟元を掴みよせようとするのを払い除け、ニットのVネックに指を引っ掛ける。 「やめてってば!」 「騒いだら人が来る。見せとくか?」 「じょっ……」 冗談やめて、と言いかけて。 顎を掴まれ上向かされて、言葉を飲む。 冗談では、なく。 その目は仄暗く熱くて、ニットの襟に引っかかった指先が胸の谷間を擽りながら、一瞬下着の中まで入り込んだ。 「わかった! ちゃんと帰る、帰るからっ……」 コートの前を寄せ集めて身を竦ませる。 すると頭上から細く長く、息を吐き出す音がして「帰るぞ」と抑揚のない声が聞こえた。
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