見えない鎖 【藤井side】

10/29
前へ
/29ページ
次へ
「部屋のキー。泊って帰る」 「え」 言いながら、恵美に差し出した。 受け取ったものの、きょとんとした表情で此方を見上げる恵美に、意味が解っていないのかと重ねて言った。 「お前も泊る」 そう言うと、大きく目を見開いた。 その表情に、此方が首を傾げたくなる。 当然だろう、部屋とってあるのになんで恵美一人だけ帰らせるんだ。 意味が解らん。 それなのに、恵美は酷く慌てた声で俺を制止した後、母親に向かって頭を下げる。 「あの、すみません。それじゃあ……部屋まで送ってきます」 「いえいえ、こちらこそ。愚息が迷惑かけてます」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

851人が本棚に入れています
本棚に追加