見えない鎖【藤井side】

「な……なんで」

「泣け、もっと」

「え……ひど……」

そんな俺を呆れた視線で恵美は見上げながら、またぼろぼろと涙を流した。

俺が振り回されてる以上に、翻弄されて、逃げられなくなればいい。

甘やかしては傷つけて、見えない鎖で雁字絡めにして身動き一つできないようにしたかった。

「……藤井さんって、なんなの？　私が泣くと嬉しそうな顔する」

泣き顔をいちいち隠そうとする手を邪魔しながら、頬に流れる涙を唇で拭っていると、恵美がくしゃりと顔を歪めて笑って言った。

なんなのって……そんなの決まってる。
普段簡単には泣かないような女が、俺の前で堪えきれずに泣く。

気分が良いに決まってる。