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「……可愛かった」
恵美を見下ろしながら、ぽろりと出た言葉に自分でも驚いた。
嘘じゃない。
だけど。
いつもなら簡単には言わない。
タイミングを狙ったり不意を突いたり妙な駆け引きばかりを覚えて、簡単には口にしなくなった言葉。
「可愛かった。泣いてすがってきて……もっと、甘えさせてやりたくて」
恵美の泣き顔を見下ろしその涙を指で拭いながら、駆け引きも計算もない言葉が落ちた。
驚いて目を見開く恵美を目の前に、頭の中では少し見当違いのことばかりを考えている。
嘘じゃ、ない。
けど、なんでこんなに恥ずかしげもなくべらべら喋ってんだ。
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