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恵美の肩を掴んで立ち上がると、ぐらぐら揺れる視界に気分が悪くなる。
毎度毎度、この瞬間にはいつも飲んだことを後悔するのに、いつも結局飲まされるのは、やはり好きなのだ、酒が。
「兄貴、大丈夫かよ。豊田さん、車まで? 一緒に行くよ」
「すみません。タクシーで帰ろうと思って」
そんな意味の解らない会話がすぐ傍でされていて、早く休みたいのにと余計に苛立ちが募ってしまう。
何言ってんだ。
部屋取ってあるって言ってるだろ。
肩を支えようと近寄ってきた要を、手で制止を促してスーツのポケットに手を入れる。
指先がすぐに、カードキーに触れた。
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