言葉にするのは

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笹倉夫妻のマンション前に車を停めて、エレベーターを上がる速度ももどかしい。 玄関でインターフォンを連打しそうになる勢いを深呼吸で鎮めて、一度だけ押した。 「藤井さん?!」 「恵美は? 連れて帰る」 驚いた顔で扉を開けた美里にそう告げながら、その足元に目を走らせる。 あるだろうと思っていた恵美のスニーカーは、そこにはなかった。 「恵美は、来てないのか」 「来てないよ。迎えに行くんじゃなかったの?」 「具合が悪いから早退したって」 じゃあ、どこだ。 実家だろうか。 考え込む俺に、美里が呆れた顔で言った。 「じゃあ、家に帰ったんじゃないの?」
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