言葉にするのは

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マンションのエントランスを駆け抜けて、玄関扉のノブを回すとガチっと音がして開かなかった。 もどかしく鍵を取り出して漸く開いたら中は真っ暗で、情けないほどに心臓がどくんと鳴った。 誰も、いないんじゃないかと。 ただ、背後から玄関に差し込む灯りで恵美のスニーカーが確かにそこにあるのが見えた。 「恵美? 帰ってるのか」 廊下の灯りを点けて、途中の寝室の扉を開いたが中は空っぽで、早足でリビングに向かい灯りを点ける。 一瞬、目が眩んで目を細めた。 それでも朧げな、人の輪郭を見つけて近づく。 「真っ暗なままで何やってたんだ」 光に慣れた視界にやっと、間違いなく恵美の後姿が見え同時に此方を振り向いた。
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