639人が本棚に入れています
本棚に追加
「……何か言ってたか」
『大泣きしながら電話かけてきた。だからもう藤井さんなんか捨てて暫く家においでって言った』
「そうか」
当然だろうな、と納得しながらも壁の時計を見上げた。
恵美の今日のシフトは中番の筈だ。
だとしたら、仕事上がりは十九時頃だろう。
俺の素っ気ない返事が気に入らなかったのだろう、美里の声がワントーン低くなった。
『そっか、って。それだけ?』
「関係ない。店まで迎えに行って連れて帰る」
『ちゃんと答えてあげられないなら何度連れて帰っても一緒だと思うけど』
「わかってる。だから……」
だから。
今距離を置かれる方が、まずい。
最初のコメントを投稿しよう!