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『昔は私を臆病者って馬鹿にしたくせに。自分の方こそそうなんじゃないんですか』
まるで今までの恨みを晴らすかの如く捲し立てて、納得しそうにない美里との電話をほぼブチ切りで強引に終わらせて、恵美を迎えに行く準備をする。
まだ、昼過ぎだ。
早すぎるのはわかってる。
それでも焦燥感に追い立てられて、恵美の勤めるショッピングモールに向かった。
今ならわかる。
喧嘩の後で、ケーキを買って帰る旦那の気持ちが。
恵美の好みそうなものを探して彷徨って、頭の中は今夜恵美とどう話をしようかとそればかり考える。
簡単だ。
「昨日は悪かった」
「俺も、好きだ」
それだけ言えば万事解決だ。
理屈ではわかってるのに、なぜか感情が「それではだめだ」と否定する。
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