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「や……どこいくの」
「飲み物を取ってくる。ちゃんと飲まないと脱水症状になるぞ」
「いい、大丈夫」
「恵美、すぐ戻るから」
「恵美、悪い、ちょっと……」
「やだ……」
「トイレだ。トイレ行くだけだ」
冷静になって思い出せば、かなり恥ずかしいやりとりを何度かした覚えがある。
熱だから。
熱のせいだから。
どうやら風邪をこじらせたらしい私の熱は、解熱剤のおかげで朝には随分楽になった。
ぴぴ、と電子音が鳴って脇に挟んでいた体温計を抜いた。
「どうだ?」
「37.8だって」
ベッドの淵に座るスーツ姿の彼にそれを差し出すと、眉根を顰めて私を見下ろす。
「仕事は休めよ」
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