Only you are seen.

2/29
前へ
/29ページ
次へ
情けない。 恋に溺れて仕事も手につかず、挙げ句顔色が悪いとみんなに心配をかけて早退させられるなんて。 ますます、自己嫌悪に陥りそうだった。 あんなことで泣くなんて、どうかしてた。 彼が素直な言葉などくれる筈もなく、期待どおりの返事はないことくらい、予測は出来る。 だからって、彼の気持ちを疑うことはない。 大丈夫。 ちゃんとわかってる。 言葉なんか、なくたって……。 そう、自分に言い聞かせながらも、店を出て歩いているうち、どうしてもやるせなくて吐き出したくて。 携帯越しに美里の声が聞こえた途端に、私は堪えきれずに泣き声を上げてしまった。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

675人が本棚に入れています
本棚に追加