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カンナちゃんがぐずり出して、見ると暁さんの膝から逃げ出し美里のところへ歩いてきた。
「よしよし。どうしたの?」
そう言って抱き上げる美里の顔は、もうすっかりベテランのママだ。
あんなにふらふら頼りなかった彼女が、カンナちゃんを身ごもった時に私に言ったことがある。
『母親になるのに必要なのは、人生をシフトチェンジする覚悟だと思う』
愛情だとか、掴めないものを信じようとはしなかった、彼女らしい言葉だと思った。
美里はその言葉通り、それまで持っていた女としての悩みも弱さも全部捨てて、ちゃんと母親になったのだ。
それはちゃんと、彼女の中に愛情があるからこそだと思うのだけど……彼女はわかっているのかな。
敢えて聞かない。
今は間違いなく、幸せそうだから。
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