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『祐希~入るぞぉ』
土曜日の昼過ぎ、ハスキーボイスの低音が俺を呼ぶ。
読んでいた漫画をパタンと閉じドアを見る。
『どう…』
バタンッ、部屋のドアが勢いよく開きワイシャツにネクタイの叔父がニヤニヤ笑いながら入ってきた。
つやのある黒い髪をきれいになでつけ、今流行りのメガネをかけたいかつい体格の男が俺の叔父。
そこそこ有名だった芸能事務所で働いている。
『なぁ祐希~、うちの敏腕マネージャーがおまえを欲しいってさ』
『欲しい!?やめてくれよっ、俺こんな容姿だけど男には興味ないから』
『頼むよぉ!会うだけ会ってよ。
任せて!連れてくから!って言っちゃったんだよぅ』『まった~、園生叔父さん特有の出任せじゃない。
会わないよ。
俺やんないから』
『まぁまぁっ、祐希ちゃん。マネージャーにはかわいい親戚もいるらしくて…彼女欲しいって言ってただろ?』
『俺はっ…』
『俺は?何?彼女いんの?』
『ううん…』
言えないよ…
初めて見た入学式から片想いだって…
言ったら最後片想いは失恋どころかあの子に愛想つかされちゃうさ。
叔父って破天荒だからさ、めちゃくちゃにされそうで世間話っぽく女の子の話を…なんて無理なんだよ。
『決まり!彼女いないなら会って損なし!』
『園生叔父さんっマネージャーに会うなんて一言も!』
『スマホ、スマホ、スマホぉ~。
最新のスマホを買ってやったのは何処のイケメンかな~?6万円~』
『わかったよぉ!』
『じゃ、明日な』
鼻唄混じりに階段を降りてく叔父。
タダンッ…
『痛っ~…姉貴、用は終わったから帰るよ』
『誠次?』
またおしりを擦りながら帰ったらしい。
園生誠次…俺の叔父。
誠次って名前が泣くようなトラブルメーカーさ。
あぁ明日の俺って。
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