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「駅まで行けばファミレスくらいあんだろ?」
「ありますけど」
「ほんじゃ行こうぜ?」
「……え?」
「付き合えよ。奢るし」
登下校中の飲食店への出入りは
校則で固く禁じられているし、
学校の最寄り駅近くで
制服のままファミレスへ行く度胸は、
はっきり言って持ち合わせていない。
「制服でファミレスはちょっと……」
かえでは無意識に顔までしかめて応えた。
亮はその態度に苦笑しながら、
着ていたライダースジャケットを脱ぐと、
いきなりどうしたのかと
まつ毛を瞬かせるかえでの肩に羽織らせた。
そして呆気に取られているかえでに
子供のような笑顔を向ける。
「これで大丈夫じゃん?」
大丈夫って……
姿勢を崩す事無く直立する守衛の姿は、
ずっと視界の端に映っていて、
かえでが恐る恐るそちらへ目を向けると、
無表情ながらも鋭い視線がこちらへ注がれていた。
「……守衛さんに見られてますケド?」
「はは。ガン見されてるし。んじゃ行こうぜ」
この状況で何故笑えるの?
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